味と匂いの科学技術



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講義内容

本講座では、味覚と嗅覚で感じる味と匂いとは何か、また、これらを定量化する科学技術について学習します。1989年に九州大学の長年の研究に基づき「味を測る」という概念と「味を測る装置である味覚センサ」が特許出願されました。それから25年以上経ったいま、このセンサは、世界初かつ日本発のオンリーワンかつナンバーワンの科学技術として全世界の食品メーカーや医薬品メーカーで使われています。この装置の開発で、重さや長さの物差し同様、万人共通の味の物差しを提供し、味を目で見ることが可能となったのです。その用途は、新食品の開発、小児に優しい苦くない薬の開発、品質の保証、安定した食品の提供や客観的根拠に基づくマーケティングを中心とし、今後のさらなる展開が期待されています。

また、匂いの数値化も可能となってきています。「数値化」とは「平均的かつ標準的な物差しを基本として対象を客観視すること」です。表面プラズモン共鳴(SPR)と抗原抗体反応を利用することで、イヌの鼻を超える超高感度匂いセンサ(electronic dog nose)の開発に成功し、その結果、現在、防衛省にて研究開発用に使われている装置の紹介をします。

五感の中でも、視覚や聴覚といった物理感覚に相当するセンサは古くから開発されていました。カメラやマイクロホンです。それは、これらの感覚が光や音といった物理量を受容する感覚であり、それらを電気に変換する素子である半導体がセンサとして使えたからです。他方、味覚や嗅覚といった化学感覚では、その開発は遅れていました。それは「人の感じる感覚を数値化できるのか」「電気に変換する材料が不明」という事情によるものです。こういった事情もいまや大きく変わりつつあります。

「おいしさ」をどのように評価するか、それも日本発の科学技術で可能となりつつあります。うま味を発見した日本、和食が無形文化遺産に登録された日本、味覚センサを開発した日本です。日本の産んだ科学技術が新たな21世紀の食文化を創ろうとしています。

学習目標

1. 主観と客観の違いを理解する。
2. 味覚センサの原理と活用事例を把握する。
3. 匂いセンサの原理と活用事例を把握する。
4. 時間や重さの数値化と味や匂いの数値化の違い及び類似性を理解する。
5. 味と匂いを数値化した世界をイメージする。

講義計画

Week1 :味を測る科学技術 2016/9/23(金)~ 選択式テスト
・味とは何か
ž・味覚センサの登場
ž・味を測る
ž・ハイブリッド・レシピ
ž・味を目で見る

Week2 :味覚センサの特性と活用事例 2016/9/30(金)~ 選択式テスト
・味覚センサを用いた食品開発
ž・基本味応答
ž・広域選択性
ž・ポータブル味覚センサ
ž・教育用味覚センサ

Week3 :匂いセンサとその他の話題 2016/10/7(金)~ 選択式テスト~ 選択式テスト
・匂いの可視化
ž・Electronic dog nose
ž・匂いセンサ搭載ロボット
ž・産学官連携,味覚・嗅覚センサ研究開発センター
ž・味覚センサ開発秘話

講師・スタッフ紹介

都甲 潔
昭和55年3月九州大学大学院博士課程修了、九州大学工学部電子工学科助手、助教授を経て、平成9年4月より九州大学大学院システム情報科学研究院教授。平成20年~23年、システム情報科学研究院長。21年より主幹教授。25年より味覚・嗅覚センサ研究開発センター長

前提知識

特になし(目安として、中学卒業程度の理科の知識があると良い)

課題内容

  1. 毎週、選択形式の確認テストを実施
  2. 最終週は選択式の最終テストも併せて実施

テストの配点とスケジュール

Week1 確認テスト: 10問(20点)
Week2 確認テスト: 10問(20点)
Week3 確認テスト: 10問(20点)
最終テスト: 20問(40点)
合計100点

すべてのテストの解答期限: 2016年10月21日(金)
修了証発行日: 2016年10月27日(木)

修了条件

・すべての確認テスト、最終テストに解答(送信)すること
・すべての確認テスト、最終テストの合計で60点以上を獲得すること

参考文献

『感性の起源』都甲 潔(著) 中央公論新社(ISBN:4-12-101772-2)